レコード会社時代


希望通り制作部に配属されて、よかった・・と思ったら、な、な、なんと
今まで縁がなかった芸能界関係担当ディレクター候補の模様。
軽音楽部のドアどころではありません。もっと大変なドアを開けてしまったような気がしました。
最初は戸惑いました。けれどふたを開けてみると、自分の好みの作家と好きなように仕事ができるし、
いろんな編曲家のお仕事も目の当たりにすることができ、変化があってとても楽しいのです。
「こんなに勉強させてもらって、楽しい思いをさせてもらって、お給料をもらってもいいのかなぁ。」
と思う毎日でした。平均睡眠時間3時間でも耐えたのは、充実していたからです。
ずっと憧れていたアーティストや作家の方達は勿論、担当していたアイドルの子達も、
付き合ってみると、改めて「ただものじゃないな」と感じたし、「さすが」と感心しました。
でも、そういう方々に直接御指導頂いたり、叱咤激励され、自分で言うのもなんですが、
この頃の私の成長ぶりは目を見張るものがありました。

また、歌手のかわりに仮歌を歌ったりコーラスの録音に参加していたら、
いつの間にか、歌やCMソングなどの仕事が舞い込むようになってきました。
バンドも細々と続けていたし、宅録も4ch→8chとステップアップしていたので、
スタジオでミキサーが作業するのを見て覚えて帰り、家の8chデッキで試す日々でもありました。
本業のプロデュースの方は、やりたいこととできることの間で揺れて、悩み・・
そのうち、一体自分が何者なのか、何をやっているんだか、何をやりたいんだか、
だんだん頭が混乱してわからなくなり、考えこんでしまう日が多くなりました。
外から見ると華やかな生活でしたが、もう、精神的にも肉体的にも中身はぼろぼろでした。
電車の中で倒れた時、「ついに私の限界がきたな」と思いました。
その時「のんびりしても、生きていけるよ。」と当時先輩で今は夫の「羊男」が言ったのです。
私がぼろぼろになると、必ず「羊」が登場するでしょう?
その言葉になんだかとても救われたので、思い切って退社を決意し、結婚しました。
結婚式は、「羊」似のミルワード神父様に挙げて頂き、「羊」のような先輩が夫になりました。


結婚後


急にやめられない仕事もあったし、刺激がなくなるのも恐かったので、
結局、退社後もフリーでディレクター、歌、作曲などを続けていました。
が、出産直前まで仕事をしたあとは、長い長い子育て暗黒トンネル時代を迎えたのです。
拘束されているけど、暇・・暇だけど、何もできない・・。
のんびり作曲や録音?とんでもない。細切れの自由時間では、
とてもじゃないけど作曲や録音などの集中力を必要とする作業は出来ないのです。
おまけに刺激、触発はゼロ。
10歳頃からずっとずっと走り続けてきた私が、泣きたいくらい退屈に感じた時期です。
こどもは可愛かったし、夫もよくしてくれていたので、特に文句はなかったのですが、
初めて社会から取り残されたような感じの孤独感を味わっていました。
そうかといって、子供を人に任せて出かけたり仕事をするのも何となくイヤで・・

細切れの自由時間は、ゲームやテレビや主婦友達とのおしゃべりでつぶしていました。
面白いものです、この経験が後に大いに役に立ってしまうのですから・・
人生において、無駄なことは何もありませんね!

ほどなく、「ファックスでやり取りすればいいから、やってみないか。」
と子供向けテレビ番組制作の仕事のお誘いが舞い込んできました。
子供の好きなもの、興味のあるものは、ゲームやおかあさん友達を通して情報入手していたし、
テレビもよーく見ていたので、自信がありました。勿論、二つ返事で引き受けました。
けれど、すっかり怠惰な生活に慣れきってしまっていた私は、
頭の回転も鈍く、フットワークも悪く、迷惑をかけてばかりになってしまいました。
気持ちはブルーになり、もう辞退した方がいいかもしれないとも思いましたが、
忙しくて倒れてしまった頃や、暇で気が狂いそうだった暗黒時代を思い出し、心が揺れました。

そんな私を「無理しないで頑張れ。」とスタッフ達が応援してくれました。
この「無理しないで頑張れ。」という言葉、とてもいい言葉だと思いませんか?
私はこの言葉を聞いて、ハッとしました。そして、出口方向がようやく見えたのです。
自分ができることを整理し、やらなくてはいけないことの優先順位をつけて・・
すると、自然体で無理なく動けるコツがわかってきたのです。
このコツをつかんだことで、その後の私は、絶妙なバランスで人生を謳歌しています。
妻として母として人としての任務、適度な仕事、趣味・・
シーンごとに優先順位をよく考えてつけると、自然体のままでも結構頑張れるのです。
この調子で、有意義な時間をできるだけ多く持ち、笑って楽しんで生きていきたいと思います。

ところで「ノンキー」のページを見て頂けましたか?
「ノンキー」は私のこれまでの様々な経験を活かし、集大成として取り組くんだ作品です。
そこで生い立ちを書くことは、プライベートなことなのでどうしようかと迷いましたが、
どうして「ノンキー」をそんなに作りたいかを分かって頂ければと思い、
思い切って書いてみたのでした。

最後まで読んで頂きましてありがとうございました。


back