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PARIS

桃李成蹊

2016_06/28 updated

陶芸家の山本安朗さんが「最近、故事成語をよく書いているんだよ」
と仰ったので吹き出してしまいました。
私も最近まさにそれをやっていたからです。
類は友を呼ぶのですねぇ。

故事成語が生まれた背景には、多くの奥深い物語があって、
ユニークなエピソードや美しい物語、悲しい史実に心が動きますし、
状況を改善していくヒントがそこかしこにあるので、
壁にぶつかった時、必ず書き出すようにしているのです。
「温故知新」も好きな言葉のひとつなのですが、
その通り、古きを知ることから沢山の考えが生まれ、前進することが出来ています。

でも、最も影響を受けてきた言葉は「桃李成蹊」なのです。
「私の人生の目標であり道標である」と言っても過言ではありません。

桃や李の木の下には、花の美しさや果実の美味に惹かれ人々が集まり、
その人たちが木の下を往来し、いつしか道ができる、
というのが本来の意味らしいのですが、転じて、
「誠実さがあれば、多くは語らずとも自然と周りに素晴らしい人達が集まってくる」
ことを指すのだとか。

どんな場所に生えていても、かぐわしい香りを放ちながら立っている桃の木が、
いつか素敵な人に発見して貰えることを夢見て徳を積み続けるなんて、
しかも、その桃の木が深い山の奥にあって、そこに至る道がなかったとしても、
分かる人にはその場所が分かるだなんて、
素敵過ぎです。
いいなぁー。そういう関係が理想的だなぁー。
徳を積み、じっと待つ木にも、
自分の鼻や目や耳や勘で、魅惑的な木を見つけ出す人にも憧れちゃいます。

でも、残念なことに、こういう考えの人がどんどん減っているように感じます。
いかに「速く」「ラクに」「お得に」暮らせるかが、今どきの考えですものねぇ。
その弊害にもすっかり慣れてしまっている印象を受けます。
魅惑的な桃の木の下には、車道と駐車場が整備され、
看板が出来て、休憩所と土産物屋もできて、情報が拡散され、大々的な宣伝活動が行われ、
観光客が押し寄せ、排気ガスをまき散らし、ゴミを落として、環境が悪化していく。
欲の強い人達に振り回されて疲弊した桃の木の叫び声が聞こえてくるようです。

でも、その桃の木自体も、得したいのか、注目されたいのか、
傷つきながらも自己宣伝していたりすることもあって、びっくりしてしまいます。
じっと待っていたら置いてけ堀になる不安にかられるからでしょうかねぇ。
まあ、気持ちがわからないでもないですけど。

milly la foretも、始めた当初は、不安一杯でしたもの。
かぐわしい香りも綺麗な花も美味しい実もなかったですからねぇ。
でも、一貫して「桃李成蹊」を信じ続けてこられたのは、
上を目指してひたむきに頑張り続けるという点においては、自信があったからです。
「少しだけでもいい、常に進化し続けている姿を見せよう!
そうすれば、きっと素敵な人達が集まってきて下さる。」
そう言い合って、ライブやCDの告知はしても誰彼となく宣伝するのはやめ、
ひたすら修業と丁寧な制作と機材の点検に時間と気力と体力を使うようにしてきました。

その思いが天に届いたのでしょうか、
milly la foretの木の下にもようやく道ができてきました。
そこを通って、水や肥料を私達に与えに来て下さる方も登場し、
おかげで幹も太くなりつつあります。
でも、まだまだ修業が足りないのか、天からは次々と試練が降ってきますけれど。


陶芸展

先日、前述の陶芸家山本安朗さんと華道家のコラボ展でのライブがありました。
命がけで創った素敵な作品の前で演奏させて頂けることは大変光栄、大変有難いことなのですが、
実は、このライブ、私達にとっては「試練」でもあるのです。
なにせ「美」に造詣の深い方々が往来するアウェイ感溢れる会場で、
リハどころか音出しさえもかなわないのですから。
さらに、ライブが始まる頃、お酒やつまみが運び込まれ、宴が始まってしまいます。
私達の目指す浄化されるような空間とはほど遠く、、、
一昨年の1回目は、慣れない空気に完全に呑まれてしまい、ひどい演奏をしてしまいました。
見に来て下さったお客様に申し訳なくて申し訳なくて・・・
なので、2回目は逃げ腰で、ちゃんとお声掛けしないままこっそりやってしまったのです。
ところが、精魂込めて作られた陶器や見事な華の前に立った時、
「ああ、なんてことをしてしまったのだろう。
陶芸家の山本さんにも華道家の大塚さんにも大変失礼なことをしてしまった」
とひどく落ち込んでしまったのでした。
なので、3回目の今年のライブは、ベストを尽くそうと決めていました。

とはいえ、会場は山本さんの陣地ですから、私達が出来ることは限られています。
そのなかで「良い環境」「良い音」を築くにはどうしたら良いのか、
何日も何日も考えに考え抜きました。
が、結果は窮途末路でした。

でも、なんと、その「窮途末路」という言葉が、私達を救ってくれたのですよー。
窮途末路→故事成語→桃李成蹊 と連鎖で思い出した「桃李成蹊」を、
いつものように紙に書いてみたところ、解決策がすぐに見つかったのです。
実に簡単なことでした。
「お客様がお酒にもつまみにも興味がわかなくなるくらい素敵な演奏をすればいいのだ! 」
外に目を向けていたからダメだったわけで、自分達に目を向けるべきでした。

果たしてそのライブは、、、


セッティング中の画像ですが、お花が一番綺麗に写っていたので

桃の下に出来る小道を通る人は、少数であっても安心のできる温かい友人であり、
そして、そういう人達が歩いて自然に出来た道は美しいのだそうですが、
このことを実感させて頂けたライブになりました。

いつも来て下さるお客様達がお見えになると、空気が明らかに変わったのです。
人の放つ空気感が、こんなに凄い力を持っていることを初めて知りました。
「ああ、この方々と出会うことが出来て良かったなぁ。
ライブを続けてきて良かったなぁ。
この方々のために一所懸命歌おう。
そして山本さんのためにベストを尽くそう!」と思えました。

その気持ちが音に表れたのか、周りの様子がどんどん変わっていったのです。
お酒を飲んでいた人がグラスを置き、聞き入って下さるようになったり、
横を向いて座っておられた方が真っすぐ座り直して下さったり。
天から与えられた試練を、また一つ乗り越えたられたような気がしました。
山本さんの感想が私達と同じだったことも、さらに嬉しかったことでした。


さて、私にとって2つ目の桃李成蹊「ノンキー青空市7」を、8月28日(日)に開催致します。
13年前、「音楽をやっていて良かったなぁ、良い仲間に恵まれて良かったなぁ」
と心から思える場所を作ろうと思い立ち、2年に一度開催してきたこのイベントは、
人間力と愛を引き出したく、PAは自前、裏方はボランティア、会場は公共施設、
「ギャラなし入場料なしカンパのみで賄う無い無い尽くし」の形をあえてとっています。
そういう条件下でも出演して下さる、働いて下さる、応援して下さる方は、
間違いなく私が求めている仲間に違いないからです。

まだ準備の前の準備の段階ですが、
「こうしたらもっと良くなると思う」「こうしましょうか?」
と提案して頂いており、すでに感無量状態。

皆が歩いて作り上げてきた桃の木の下の小道は、
この夏が終わる頃、さらに長くさらに美しく育っていることでしょう。
今月末にフライヤーがあがってきますので、
そしたら、青空市ブログでいろいろお知らせしていきますね。
今回も素晴らしいコンサートになりそうですよ。請うご期待です!


それから、蛇足ではありますが、もう一つの桃李成蹊、
この日記について少しだけ書かせて下さい。

SEO対策をした方がいい、フレームはダメ、スマホ対応のコーディングをすべき、
ブログの方がRSSリーダーで読めていい、Twitterの方が旬の話題を提供出来る、
更新頻度をあげないと誰も見に来なくなりますよ、
などなど、日記にまつわる有難いご意見を頂いているのですが、
正直、そういう工夫は、私には機械とアスファルトで作った車道のように思えてしまうのです。
私は、やっぱり自然に出来ていく桃の木の下の小道が好き。
なので、 この不便な形を守らせて下さい。
今思っていることをしっかり推敲しながら書く、
頭の中にある景色を出来るだけ丁寧に描く、
これだけに集中させて下さい。

そして、こんな不便で更新されないページを訪れて下さる奇特な方こそ、
私が求めている、私が大好きなタイプの人に違いない!
と信じて疑っていないことを、付け加えさせて下さい。

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